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気づいた恋心。(6)
ごめんなさい。
ごめんなさい。
ごめんなさい、紅さん……。
淫らな液で濡れてしまったズボンと下着を着替えながら、僕はずっと紅さんに謝り続けた。
何度も、何度も……謝って、謝って……。
だけど罪悪感は当然のように消えなくて……。
僕はずっと、ひとりで泣いていた。
枕はもう涙でびしょびしょだ。
このまま……泣き続けて消えてしまえることができれば、どんなに楽だろう。
紅さんの好意をひん曲げてしまった。
優しい気持ちを……こんなふうに汚いモノに変えてしまった。
やっぱり僕はみんなの言うとおり、とても汚い化け物だ。
「ひっく……ふっ……」
嗚咽 を押し殺し、枕に顔をうずめて泣いていると――……。
「……良」
僕の耳に優しい声が降りてくる。
だから、ああ、もうそんな時間なんだって思った。
だけど、ダメ。
涙は全然、止まってくれない。
「っふ……ごめんなさい」
泣き止むこともできないなんて……なんて情けないんだろうか。
「比良 ?」
「ごめんなさい」
泣く僕の頭上から、心配する彼の声が聞こえる。
とてもじゃないけれど罪悪感に塗れた今は紅さんの顔を見ることができない。僕はただただ顔を俯 けて泣く。
「比良!!」
「――っつ!!」
突然僕の身体は宙に浮いて、あたたかな腕に包まれてしまった。
「比良、何が悲しいの? 怖い夢を見た? 話してごらん?」
優しい声。
あたたかい腕。
その人を……僕は汚してしまった。
僕はブンブンと頭を振って、彼の腕から逃れようと身体を捩 る。
それなのに、紅さんは全然離してくれない。
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