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はじめてのデートとさようならと……。(2)
……だから、今日で最後にしようって思う。
今日で……紅さんとはお別れするんだ。
大好きな紅さんと離れるって思うと、とても苦しいけれど……でも……紅さんは僕なんかと一緒にいてはいけない人だ。
そんな今日は、紅さんのお仕事先がお休みの日。
時間はお昼前の11時。
紅さんが僕の体調も良くなったからって、体調回復のお祝いで今から映画館に連れて行ってくれるんだ。
映画館なんてテレビの中でしか見たことが無かったから、どんなふうなのかドキドキする。
それに、紅さんと一緒に外を出るのもはじめてだからとても楽しみだ。
紅さんと過ごすのは今日で最後だって決めたのは、楽しい思い出を残そうと思ったから。
この先――。
ひとりになった僕は、紅さんと出会う以前に戻ってしまうだろう。
それに耐えるだけの幸せな思い出がほしい。
そう思っていた矢先、紅さんにどこか行きたい場所があるかって訊 かれた。
行きたい場所なんて、紅さんとならどこだってかまわない。
紅さんさえいれば、僕にとってはそここそが天国だ。
どこでもかまわない。
だけど、もうすぐ終わる。
さようならしなきゃ……。
紅さんと別れた後のことを考えるととても寂しくって胸が張り裂けそうなくらい苦しいけれど、それでも大切な人を穢すよりはずっといい。
ずっとマシ――……。
「比良? 準備はできた?」
コンコンと寝室のドアをノックされ、物思いにふけっていた頭を覚醒させる。
「あ、待ってください」
僕はノックされる音を合図に、慌てて七分袖の真っ白なブラウスを羽織り、黒のズボンをはく。
腰まである長い髪が少し邪魔かもしれない。
……どうしよう。
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