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はじめてのデートとさようならと……。(4)
「っ、くれないさんっ!!」
あまりにも恥ずかしくて、あまりにも嬉しすぎて、胸がぎゅっと締めつけられる。
僕は慌てて紅さんの手から髪の毛を奪い返した。
「比良はとても恥ずかしがり屋さんなんだね……」
紅さんは顎に手を当ててクスクス笑う。だけどたぶん、僕の反応は普通だと思う。
紅さんがそうやって恥ずかしいことばかりしてくるだけだ。
「さあ、比良。行こうか」
恥ずかしくって、肩を竦 める僕の背中に紅さんの手がまわる。
そこから熱が生まれて僕の身体を包み込む。
その度に、こんな綺麗な人に汚い僕を触れさせてしまっているんだという罪悪感が襲う。
でも、今日だけ……。
今日だけだ。
だからお願い、もう少しだけ……。
そう自分に言い聞かせ、紅さんと一緒に家を出た。
はじめてのデートとさようならと……。・完
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