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大好きな貴方と。(1)

比良(ひら)、こっちだよ」  (くれない)さんの真っ赤な軽自動車に乗せられて3時間と少し。  やって来たのはひっそりとした山奥から大分離れた人が賑(にぎ)わう場所。  行き来を繰り返すたくさんの人波に紛(まぎ)れながら、紅さんの手に引かれ、いくつもの高い建物が連なっている道を歩く。  こんなに人が多いところに来たのは生まれて初めてで、なんだか頭と目がグルグルする。 「比良、大丈夫? 人混みに酔ってしまったかな?」  ……はうう。  整った眉を眉間に寄せて心配そうに顔を近づけられると、グルグルしていた頭が急に逆回転をはじめる。  紅さんの服装はとてもシンプルで、大人の男性っていう感じがする。  鎖骨が見える襟元がぱっくりひらいた七分丈の黒色のカットソーに、すらりとした長い足を強調させる茶色のパンツ。  その姿に、ついつい見(みと)れてしまう。でも紅さんに見惚れているのは僕だけじゃない。男の人とか、女の人とか、そんなの関係なくって、周りの人たちがみんな綺麗な紅さんに釘づけだ。  ……あと、一緒にいる僕にも……視線が刺さる。  チクチク、チクチク。  視線が痛い。  みんなはきっと、とても綺麗な紅さんの隣にいるのがどうしてこんな見窄(みすぼ)らしい姿の僕なんだろうって思っているんだろうな。  ……うん。  僕も、そう思う。  でも、今日だけ――。  今だけだから……ごめんなさい。  どうか、どうか許してください……。  心の中で、こっそり謝る。 「比良? やはり酔ってしまったかな?」

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