123 / 253

さようなら。(4)

 夜道を照らす街灯は、チカチカと点滅を繰り返している。  とても気味が悪い。  夏の夜ならよくある、無風のジットリとした空気がまた気持ち悪さに拍車をかけている。  こうして立っているだけでも無数の霊体たちが(うごめ)いているような、そんな気さえする。  僕は上がる息を整えるため、小さな公園の中に入りブランコに腰掛けた。  ……本当は、こんなところで休んでいたくはない。  だけど、長時間走りすぎた足はズキズキ痛むし、心臓は張り裂けそうなくらい鼓動を繰り返している。  汗は、こめかみから顎のラインを通って一粒が膝上に落ちた……。  口内の唾液ももうなくて喉もカラカラだ。  ……これから、どうしよう。  途方もない孤独という闇が僕をまた襲う。  物音ひとつしない静かな公園でひとりきり。  ぶるりと背筋が震える。  紅さんと離れたのはついさっき。  それなのに、もう、紅さんと会いたいって思ってしまう。 (――ダメだ)  そんなこと、考えちゃダメ。  これ以上紅さんを頼っちゃいけない。  頭を、ブンブン振って思い浮かんだ優しい笑顔を打ち消す。  その時だった。  誰かの足音が、近づいてくるのを聞いた。 (――誰?)  俯けていた顔を上げれば……。 「彼女、かわいいね~。ひとり?」  笑い声が上から降ってきた。  そこには、長身の男の人が3人立っていた。  顔は薄暗くってよく見えない。  だけど、3人とも背は僕より大分高い。  なんか……怖い。  僕は、その場から立ち去ろうと無言でブランコから腰を上げる。  そうしたら、突然僕の右腕がひとりの男の人に掴まれた。
ロード中
ロード中

ともだちにシェアしよう!