124 / 253

さようなら。(5)

「おっと、逃げるなよ。何も怖いことはしないって……」  そう言うけれど、男の人の声はずっと低くて怖い。 「やっ!!」 (離して!!)  腕に力を入れるけれど、男の人の掴む力が強くて腕が抜けない。  それどころか、さっきよりも少しずつ力が強くなっていっている。  骨が折れちゃうんじゃないかっていうくらい、僕の腕が、ギシギシと悲鳴を上げる。 「いやっ、離してっ!!」  怖くなって、身を(よじ)って抵抗していると、左腕さえも掴まれてしまった。 「いい反応。な、どうする?」  ケタケタと、下卑(げび)た笑い声を上げる男の人は他の男の人たちに尋ねると、彼らは相槌(あいづち)を打った。 「決まってるじゃん。ヤっちまおうぜ」 「だよな~」 「んじゃ、そういうことで……」 (――えっ?)  僕の腕を掴んでいる男の人の提案に、それぞれが同意すると掴まれた両腕が背中に固定された。  僕の身体が一瞬、宙に浮き、すぐに砂地へと抑えつけられた。  な……に?  とても怖くて、拒絶する声さえも出せないままいると、また別の男の人がしゃがみ込み、僕を見下ろしてきた。 「ソソる君が悪いんだよ?」  あまりの恐怖で硬くなる僕の身体。  服の下から、手が伸びてきた。 「っつ!!」  紅さんの手の感触に慣れた僕の身体が、ビクンと跳ねる。 「おっ、いい反応」  服の下から侵入してきた手が、僕の身体を撫で上げながら這い上がっていく。 「おい、こいつ男じゃん!」  僕の胸を撫でた男の人はそう言うと、僕の顔をマジマジと見つめた。

ともだちにシェアしよう!