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さようなら。(7)

 動かし続けている両足も、男の人たちによって固定されてしまう。下半身が、ひんやりとした夜気に触れたような気がした。  見下ろせば、僕がはいていた下着ごとズボンも脱がされ、下半身があらわになっていた。  シャツはビリビリに破られ、僕の両腕を縛る。 「いい眺め……」  男の人は僕を見下ろし、口笛を吹いた。 「助けて!! たすけてっ」  怖い。  いやだっ!! 「……くれな……」 『紅さん』  助けを求めようとした僕の口。  だけど言えない。  大好きな人の名前を全部言う前に閉じた。  助けてほしい。  今だってそう思う。  それなのに、紅さんの名前を呼ばなかったのは僕が……汚いから。  汚い僕が、もうこれ以上紅さんの名前を(けが)すことはできない。  唇をぎゅっと引き結び、我慢する気持ちとは裏腹に、目からは涙が溜まっていく。  こういう状況になって思うのは、男の人たちにどうこうされるということよりも、紅さんと離れてしまって悲しいという感情だけだ。 「大人しくなったぜ?」 「抵抗するだけ無駄だってわかったんだろ」 「大丈夫だって、怖いのは、はじめだけで、すぐに()くなる」  男の人たちは口々にそう言うと、うつ伏せになっていた僕の身体を仰向けにさせた。  僕の身体が、チカチカと点滅を繰り返す外灯の薄明かりよって、照らし出される。 「……っふ……」 「すっげぇ……思ったよりイケるかも……」 「ああ、肌すっげぇ白いし、色っぽいし、そこらの女より……」  全身に、男の人たちの視線が絡み合う。

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