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さようなら。(8)
いやだ。
僕……こんなの……いや。
「誰かに弄られたことあるんじゃね? ここ、尖ってるし?」
「っ、あっ!」
僕の胸に、指が触れた。
思い出されるのは、紅さんと一緒にお風呂に入った時のこと。
紅さんが僕の胸を洗う時に触れた、ピリリと痺 れるような甘い感覚。
だけど、現実は紅さんじゃない。
知らない男の人の指だ。
男の人が、僕の乳首を指の腹で押しつぶしながら、クリクリと円を描く。
それなのに……。
僕の身体はこの行為を拒絶する感情とは関係なく、熱を持ちはじめる。
男の人の指と紅さんの指を勘違いしている、僕の淫らな身体。
それは僕が、紅さんを求めている、何よりの証拠だ――……。
違う。
紅さんじゃない。
違うのに、身体は言うことを聞いてくれない。
「んっふ……」
引き結んだ口から、声が漏れる。
「すげ、乳首、硬くなってきやがった。コリコリ……」
(――いやだ)
紅さん以外の人に触れられるなんて……いやだ……。
「肌も柔らかいし、スベスベしてる……。目に涙なんか溜めちゃって……たまんねぇ……」
もう片方の手では、身体を撫でられる。
頬ずりされた箇所もねっとりして気持ち悪い。
「っ、あっ、いやっ!!」
手首に巻かれている服を解こうとしても、丸まって動けない。
物理的な痛みが、僕の手首を襲う。
「お前だけずるいし」
声が聞こえたと思ったら、もう片方の乳首も弄られる。
「……っあ!!」
甘い疼きはやがて、大きなうねりになっていく。
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