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彼が優しい理由。(5)
紅さんが……?
霊体みたいな存在だと言うの?
でも……でも……。
紅さんはとても綺麗で、そんなふうには見えない。
それに……。
それにいつも微笑んでくれて……優しくて……。
人外だなんて、とても信じられない。
きっと霊体は嘘をついているんだろう。
じゃあ、じゃあ、どうして紅さんは否定しないの?
……もしかして、本当に……。
紅さんは、人外っていう、人間じゃないモノで――。
でも、それなら僕に優しくしてくれる理由もわかる。
僕の魂が、欲しいから……。
胸がキリキリ痛む……。
結局、みんな僕の魂を欲しがっているだけなんだ……。
そりゃ、そうだよね。
なにせ、僕は、とても醜い化け物なんだ。
僕を必要としてくれる人なんて、どこにもいない……。
「……っつ」
ズキズキ、ズキズキ。
胸が、苦しいよ……。
痛いよ……。
僕は痛む胸を押さえながら、紅さんとそれから対峙してる男の人を見つめた。
すると、霊体に乗っ取られた男の人は前のめりになり、両腕を身体の前でだらりと流した。
こういう場面は初めて見るけれど、無知な僕でも男の人が何かを仕掛けてくるだろうっていうことは理解できた。
「大方、お前もそこの魂を手に入れようとしているのだろう? だが、そいつは俺のモノだ……。誰にも渡さない……。これは好都合。あの方にいただいた力、試してやる!!」
男の人の言う、『あの方』という言葉に反応する暇もなく、皮が剥がれ落ちるような、ビリビリという耳障りな音が聞こえてくる。
その音は、耳を塞いでいないとどうにかなりそうなくらい大きい。
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