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彼が優しい理由。(10)

 僕を貪っているのは蜘蛛の姿をした霊体で、好きな人じゃない。  それなのに、僕の大きく膨れ上がった先端からは、先走りという淫らな液が溢れる。 「んっ……ふぁああああん……。くれないさ……くれないさ……」  紅さんを助けてあげたいのに、自分じゃ何もできないもどかしい身体……。  紅さんじゃないのに、こうやって乱れる醜い僕。  僕がこうしている間も紅さんは一時を争うっていうのに、僕はこうやって快楽にしか身を投じられないなんて――。  やっぱり僕はとても醜い生き物だ……。 「こん、な……やああっ……」  中を這い回る蜘蛛の糸が、奥へ、さらに奥へと突き進んでいく……。  中で根元に差し掛かったのがわかった。  もうこれ以上は進まない。  だからこれで終わりだと、そう考えた。  でもそれは、大きな間違いだったんだ。  蜘蛛の糸はあろうことか、さらに奥へと進む。  みしみしと僕の中を貫く音が聞こえる。 「ぁ……ぐぅ、やっ、やぁああ、もう入らないからぁぁあああっ」  これ以上進むと、そこは僕の腸に差し掛かる。  僕のお腹は破裂して、死んじゃうんじゃないか。そう思ったら、怖い。  すごく怖い……。  それなのに、先端からはまだ先走りが流れているんだ。  まるで、もっと貫いてくださいと言わんばかりに……。  なんて……。  僕はなんて醜い生き物だろう。 「い、や、いやぁぁぁあああああっ」 「いや? そんなことはない。だってお前の先端からはたくさん蜜が流れているじゃないか。悦んでくれて嬉しいよ。それ、まだ入る……」

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