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彼が優しい理由。(18)

「さすがはわたしの比良。理解能力がおそろしく長けているね」  僕の言葉に、紅さんは僕の姿を捉え、にっこりと微笑んだ。  ……とくん。  まだ戦闘中だっていうのに、僕の胸は紅さんの笑顔ひとつ向けられたそれだけで、また息を吹き返したかのように高鳴る。  僕の呟きに反応したのは、紅さんだけじゃない。  蜘蛛の姿をした霊体もだった。 「ばかな……。仮にそうだとしても、俺の攻撃からその人間を突き放すまでの時間はあまりにも短かった……避けられるハズは……」  ――そう。  そうだ。  紅さんが僕を突き飛ばした時、紅さんは木にもたれていた。  そこから攻撃を受けるまでの時間はかなり短い。  紅さんは、ほんの数秒間で回避したっていうことになる。  そんなの……今まで僕が目にしてきた霊体でも知らない。 「わたしたち一族は、俊敏な動きが特徴でね。君たちのような生き物と一緒にしないでほしいな」  蜘蛛を踏んだままのその微笑みは、今まで僕が知っている中での紅さんじゃない。  静かに怒る、見たことの無い表情だ。 「そ……そん……」 「さあ、わたしの比良を殺そうとした罪だ。覚悟はいいね」  今なら紅さんの言う、『わたしの比良』という意味がよくわかる。  僕の魂が、彼のモノだという意味……。  ……だから紅さんは、いつも僕を美しいって言っていたんだ……。  それは僕の、『魂が美しい』っていう意味だったんだ。  だからだね、たくさん人がいる中でも僕の容姿を褒めることができたのは……。  僕は馬鹿だ。

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