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彼が優しい理由。(19)

 古都くんと鏡さんが想い合うように、僕のことも少しは想ってくれているのかと思い込んでいたなんて……。  だったら早く、『魂が欲しい』ってそう言ってくれたら良かったのに……。  優しくなんかしないで、他の霊体たちと同じように僕を襲えばよかったんだ。  そうしたら……こんな……胸がギュッと潰れそうな、苦しい想いなんてしなくてすんだのに……。  胸が……痛い。  苦しい。 「まっ、待て!! な、ソイツの魂ならお前にやる。少しでいいんだ。俺に分け与えてくれさえすれば!! な、いいだろう? ほんの一粒でいいんだよ」  ――そうだ。  紅さんも僕の魂を狙っているひとり。だったら、無用な争いで僕の魂を奪い合うよりは、ふたりで分かち合う方がずっと要領がいい。  ……ああ、胸が、潰されるみたいに痛い。  でも……それでいいのかもしれない。  これで僕は……この世界からいなくなることができる。  紅さんを見るのは、これが最後。  だから、僕は苦しくて泣きそうになる目を瞬(しばたた)かせ、紅さんの姿を焼き付ける。 「この期に及んで……。君は愚かだね……」  その言葉は蜘蛛の提案を拒絶したことを意味する。  紅さんが蜘蛛の上から飛び退く。――直後、蜘蛛の身体に無数の赤い亀裂が入った。  黒だった蜘蛛の装甲が赤い火花に包まれ、輝きながら散っていく……。  まるで、散りばめられた赤い宝石の数々が無数の色彩を放ち、光を屈折し合って、夜色の殺伐とした公園を覆っていくかのようだ……。  それはとても綺麗な光景だった。  輝く赤い光が公園内に舞う。その中で、蜘蛛が倒れていた場所に真っ黒な塊があった。

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