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薔薇の香りに導かれ……。(6)
「……っふ!!」
僕の耳に紅さんの柔らかい唇が当たっている。
耳孔(じこう)へと直接送られてくる息に、僕の身体がまた反応しはじめてしまう。
「たしかに、比良の魂も魅力的だが、それは君という器がなければ、まったく意味をなさないものだ。比良……わたしは君のすべてが欲しい」
紅さんの手によって、僕の目を覆う手が解かれていく……。
「くれないさん?」
「ねぇ、比良。わたしをそこら辺にいる人外 と同じように考えないでほしい。こう見えても、わたしは妖力は十分にある。君の魂がなくても、誰にも負けない自信もある」
「でも……それ以上に強い力が欲しいハズ……」
「これ以上の力を欲して何になるだろう?」
――えっ?
紅さんの、思ってもみない返事に今まで動かなかった僕の身体が動く。
紅さんの顔に視線を向けると、目が合った。
……とくん。
とても真摯 な眼差しに、僕の胸が高鳴る。
僕の口と、紅さんの唇が今にも触れそうな距離だ。
紅さんは静かに言葉を紡いでいく……。
「わたしは、欲するならば愛おしい花嫁を欲したい。比良が言うとおり、君から見るとわたしはいかがわしい人とは外れた者――人外だ。わたしの人外の名は妖狐。第二王子、紅」
「妖狐?」
紅さんが……?
妖狐族の王子様?
紅さんの口から降ってきた言葉は、僕を驚かせるものでしかなかった。
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