158 / 253
薔薇の香りに導かれ……。(5)
「ん…………ふぁああ……」
僕を包む紅さんの手が円を描き、いやらしい先走りが滴り落ちていくのがわかる。
握られる手の刺激に、ぬめりを帯びた一物がくちゃくちゃと音を立てている。
ここから抜け出したいってそう思うのに、身体からは熱い体温と快楽に侵されていく。
身体は脱力感でいっぱいだ。
「ふ……」
紅さんにもたらされる快楽によって、僕の身体は抗う力さえも失ってしまった。
「比良、わたしも君を愛しているよ」
僕が抵抗する力を失い、大人しくなったと判断した紅さんは唇を離して、そっと告げた……。
な……に!?
紅さんは、なにをいっているの?
『愛している』
紅さんは……そう言ったの?
――違う。
そんなことない。
紅さんは僕の魂が欲しいだけ……ただ、それだけだ。
「違う……もう嘘は言わなくてもいい。紅さんが何ものなのかも知ったんだ。魂が欲しいならあげる。だからお願い……もう僕を解放して……」
もう、酷いことは言わないで……。
僕を、殺して……。
「……っひ、っひ……」
涙を止めようと瞬きをすれば逆に、涙が目尻を伝い、耳に向かって流れ落ちる。
「も。いやだ……」
両手で顔を覆い、泣きじゃくる。
「……っひ、ふぇっ……」
嗚咽 が止まらない。
拳をつくった両手で目を覆い、みっともなく泣きじゃくる。
「比良……比良……ああ、どう言えば君は理解してくれるだろう」
「――っつ!」
紅さんが言ったすぐ後、泣き続ける僕の身体が力強い腕に包まれた。
ともだちにシェアしよう!