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薔薇の香りに導かれ……。(4)

「僕を殺せばいい。魂を奪えばいい。それが、貴方の目的でしょう? だったら、早くそうしてよ!!」  だからお願い、こんなことはもうやめて……。  キスなんてしないで。  僕を、楽にさせて……。 「もう、これ以上……僕を苦しめないで……」  優しいキスなんていらない。  あたたかい微笑みなんていらない。  僕に必要なのは、ナイフという鋭い武器だけだ。 「比良……?」 「好きなのに……すごく好きなのに……。もう、これ以上……紅さんを好きだと思わせないでよっ!!」  僕がそう言った瞬間だった。 「んっぅ……」  僕の唇が、また塞がれてしまったんだ。 「ん……んぅ……」  ……いやだ。  こんなの、イヤ。  想われてもないキスなんて、苦しいだけだ。  紅さんのこれは僕を襲う霊体よりも酷い仕打ちだ。 「っふ、ぅうっ、っふ!」  僕は身を(よじ)り、紅さんという(おり)から抜け出そうとする。それなのに、胸を押しのけようと力を入れても、びくともしない。  僕が抵抗していると、伸びてきた手によって僕が着ていた紅さんの上着が広げられた。  そしてあろうことか口づけで昂ぶる僕の一物に触れた……。 「ん……ふぅぅ……んっ、んぁ!!」  大きな手が僕をすっぽりと包み込み、やわやわと握ってくる。 「やっ、やだっ、やっ!」  手が動く度に僕の腰がベッドから浮いてしまう。  ギシ……ギシ。  ベッドのスプリングが跳ねる。 「ん……っふ……」  やめてって言いたいのに、紅さんの唇がまた僕の口を塞ぐ。口の中に侵入した舌が僕の口内を蹂躙する。

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