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薔薇の香りに導かれ……。(14)

 綺麗……。  絹みたいに滑らかで、それでいて強い鋼のような身体……。  いまだ宙をさまよっている手を伸ばし、紅さんの引き締まった身体へと移動させる。  触れた紅さんの肌は、僕の熱に浮かされた身体よりもひんやりしていて、とても気持ちがいい。  肌触りも見た目と同じくらい滑らかで心地いい……。  たくましい身体の、紅さんの胸飾り。そこへ指を這わせていく……。  くるくると円を描き、親指でなぞる。 「比良……」  するとため息のような、喘ぎのような……艶めかしくて、とても色香がある声で僕を呼んだ。――瞬間、僕の口はまた紅さんの唇に捕まった。 「んっ……んっ……」  口の中では紅さんの舌がまた、僕を支配してくる。  さっき僕のを舐めた紅さんの舌は少し苦い。  自分の放ったモノなのに、美味しいって思うのはきっと薔薇の香りの所為(せい)かもしれない。 「ふ、ぅ……」  大きい紅さんの唇が僕を食べるようにして、口を塞いでくる。  僕の手は紅さんの後頭部へと流れる。  もっと深いキスが欲しくて、強請(ねだ)った。  滑らかでひんやりした肌が擦れ合う。 (……気持ちいい)  僕の身体が紅さんの檻に捕らわれてしまった。  身も心も、もう紅さんから離れることができない。  僕を襲うのは、じりじりとと焼けるような熱――。  僕と紅さんの身体が擦れ合って、甘い痺れが走る……。 「ん……はぁ……ふ……」  だけど……じくじくが治まらない。  それどころか、もっとひどくなっていく……。

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