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素顔。(2)
普通の狐よりも大分大きな身体。
この狐、もしかして……。
僕の中で狐の正体を理解すると、僕のみぞおちに熱いものが込み上げてきた。
鼻の奥がツンとして目頭が熱くなる。
言いようのない、あたたかな涙が……。
僕の目から溢 れ、頬を伝っていく……。
「……そう。そうだったんだ……。そうやって、貴方はいつも僕を守ってくれていたの?」
胸が震える。
おかげで狐の頭を撫でる手は止まった。
そうすると、僕の隣で心地よさそうにうつ伏せになっていた狐がむくりと起き上がり、静かに涙する僕を見上げた。
その仕草はまるで、自分に寄り掛かりなさいって言っているみたいに見える……。
「っひ、っく」
どうしよう、しゃくりが止まらない。
涙がぽろぽろ落ちていく。
「紅 さん……」
やっぱり貴方はどんな姿をしていても紅さんなんだ。
そうやって、いつも僕を受け止めてくれる。
僕は狐の姿をした紅さんの身体に頬を乗せ、彼が放つ薔薇の香りとなめらかな毛並みを感じた。
「紅さん……ありがとう」
胸の内で満たされたあたたかな心が涙になって、次から次へと零れ落ちる。
……こんなにあたたかな涙があるなんて、知らなかった。
「――っつ」
僕は真っ白な空間の中、ただただあたたかな涙を流し続けた。
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