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誘惑なんてしてないですっ! (6)

「ある程度は拭いたんだけれどね、まだ、交わった痕跡が君の中にあるんだよ」  閉じていた目を開けて、僕の視界が揺れた先――そこは、乳白色のバスルームだった。  紅さんの家よりも、ほんの少しだけ大きいかもしれないバスルームの中に僕を運ぶと、紅さんは備え付けてある椅子へと僕を下ろした。 「これを飲んで少し待っていてね。わたしも脱ぐから」  差し出されたのは、いつの間に取り出したのか。  飲料水が入ったペットボトルだ。  僕は条件反射で手に取ると、フタを取ってくれた。  コクリと飲めば、身体は水を欲しがっていたようだ。  勢いよく喉に流し込んだ。 「わたしとしては、愛した証として、君の中にそのまま入れておきたいんだが、身体にはよくないから、流してあげないとね……」 「っぐふっ!!」  ゴクゴクとペットボトルの中にある水を飲んでいると、紅さんからの思わぬ言葉で()せそうになった。  そんな僕の思いを知ってか知らずか、目の前にいる紅さんは気にすること無く身体から服を取り除いていく。  ……やっぱり、紅さんの肌はとても綺麗だ。  焼けすぎず、白すぎずの健康的な肌に、無駄な筋肉がない身体。  広い背中からは、肩甲骨がくっきりと見えている。  そして……僕を貫いた、紅さんの大きくてたくましい存在。  いつの間にか、紅さんの身体を食い入るように見つめていたみたい。  僕の視線と重なった。 「――っつ!」  その瞬間、僕の身体がかああっと熱くなる。 「わたしに見惚(みと)れてくれていたんだね、嬉しいよ」

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