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誘惑なんてしてないですっ! (7)

「……くれないさ……ん」  紅さんの色香にすっかり惑わされ、放心状態の僕の耳元でそっと告げられれば、中心にある僕自身に熱をともす。 「さあ、比良。足をひらいて……」  蛇口から浴槽に向かって勢いよく流れる水の音を聞きながら、僕はすぐ目の前にいる紅さんの身体を太腿に挟むようにして椅子に腰掛ける。  手にしていたペットボトルは僕の両手から外された。 「……はぅ」  泡のついたスポンジで身体全体と少し強調してしまった僕自身すらも撫でられ、また先走りを流してしまう。  すっかり力を失ってしまった僕は、全身が泡だらけのまま目の前にある大きな肩にもたれている。  昨日、三つ編みにしてもらった髪は紅さんの手によって解かれる。  スルスルと解かれていくリボンと、髪の毛を()くようにして優しく洗われる手の感覚に、反応してしまう。  僕の口からは女の子が出すような声が、無意識のうちに飛び出した。 「ん……やっ……」  そこにはいやらしい意味なんてなくて、ただ身体と髪の毛を洗われているだけ――。  たったそれだけなのに、こうやって声を出てしまう自分が恥ずかしい。  これ以上、紅さんの前でおかしな声を出したくなくって、空いた両手で自分の口元を押さえる。  そうしたら、紅さんの指は僕の長い髪を伝いながら背中へと落ちていく……。 「むぐ……」  僕は力いっぱい口元を押さえ、下へと向かう手から逃れようと身を(よじ)る。  だけど紅さんは知らない振りをして、お尻へ移動させた。

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