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誘惑なんてしてないですっ! (4)

 必死に熱を持ちはじめている貧弱な身体を隠そうとしてるのに、紅さんはそうやって僕を追い詰めてくる。  なんて……ひどい。  紅さんはひどい!!  その時、僕ははじめて紅さんを恨めしいって思った。  これは今まで生きてきた中で僕が考えもしなかった感情だ。  知らなかった。  ……僕の中に、こんな感情があったなんて……。 「比良……君はなんて……可愛らしい!」 「んぅっ!!」  僕の口がまた紅さんに塞がれた。 「あまりわたしを誘惑しないで……」  ちゅっ、というリップ音と一緒に唇を離されたすぐ目の前で、そっと告げられる言葉。  誘惑ってなに? 「誘惑なんてしてないです……」  今まで紅さんとは何度もこうやって唇を塞がれてキスをした。  でも何度口づけされても全然慣れることなんてできない。  抗議する声は恥ずかしくて震えてしまう。  顔だって熱いから、きっと真っ赤になっていると思う。  そんな僕を見下ろしたままの紅さんが口をひらいた。 「ほら、その顔。桃のような色をした頬を膨らませて、濡れた黒真珠の瞳を上目遣いでわたしを見て……。真っ赤な唇を突きだされると、もっと口づけをせがんでいるようだ」 「――っつ!!」  唇が触れるか触れないかの距離で、そっと(ささや)く。  言いようのない羞恥と、だけど好きな人にこうして愛を告げられて抱かれたという嬉しい感情がない交ぜになって僕を襲う。 「あ、あの……ここ、どこ……?」  いつまでも紅さんの腕の中にいるのは、嬉しいけれど心臓に悪い。

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