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「愛している」の、本当の意味。(1)
「へぇ、この子がクレ兄の……」
「ならば……俺達がこういう役目になるのも当たり前、か……」
「クレ兄も人使い荒いぜ」
「ごめんね、暁 兄さん。朱 。こうする以外の方法が思い当たらなくて……」
誰だろう?
紅 さんと……男の人、ふたり?
聞いたことのない声に、深い眠りの中にあった僕の神経は、目覚めた。
暁兄さん……。
紅さんがそう呼んだその人は、紅さんのお兄さん?
それじゃあ、朱っていう人は……。
紅さんのこと、クレ兄って呼んでいた……。
紅さんの弟さんっていうこと?
あまりにも親しげに話しているから、目を開けようかどうしようか迷っていると、紅さんと暁さん、それから朱さんは、僕から離れ、違う場所に移動したみたい。
足音がほんの少し遠ざかっていく。
邪魔をしちゃ、いけないよね。
……もう少し、このまま、いよう。
目を閉じたまま、静かにしていると、紅さんの声が微かに聞こえてくる。
いったい、何を話しているんだろう。
うまく聞き取ることができない。
3人の会話に、耳を澄ます。
「兄さんと朱に頼みがある」
紅さんの言葉は、とても親しみが込められていた。
それじゃあ、やっぱり。
この人たちが紅さんの兄弟で、古都(こと)くんの、お兄さんたち……。
やっぱり紅さんのお兄さんと弟さんたちはみんな優しそうな人たちだ。
人間とは違う存在だけど、3人の雰囲気から、それがよく伝わってくる。
――いいな。
こんな楽しそうに話せる家族がいて……いいな……。
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