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「愛している」の、本当の意味。(2)
僕にはないものだから……。
本当の家族じゃないけれど……家族には、嫌われているから……。
――ううん、違う。
家族じゃなくっても、僕はみんなに気味悪がられている。
僕は……汚らわしい存在だから……。
だから思っちゃいけない。
紅さんたちの兄弟さんの輪の中に入りたいなんて、思っちゃいけない。
それなのに……。
どんなに言い聞かせても、僕は、あの中に入りたいと思っている。
胸が苦しくなって、毛布の中でうずくまると、暁さんの凛々しい声と朱さんの一際大きな声が聞こえてきた。
「今更だな」
「そうそう、今までさんざん俺たちをコキ使って、クレ兄のバーを手伝ってきたんだからな。今日だって服を届けに来たし?」
「そうだね。ごめんね」
ふたりのご兄弟のセリフに、紅さんが申し訳なさそうに微笑む雰囲気が伝わってくる……。
――だけど違う。
紅さんが悪いんじゃない。
僕の……所為 だ。
僕が、紅さんのご兄弟さんたちに迷惑をかけてるんだ。
そう思うと、罪悪感が胸いっぱいに広がっていく……。
身体を包む両手を、さらに強く抱きしめた。
「比良 を狙う輩がいる。それも、そこらへんにいる霊体ではない、魔界から呼び出さなければ滅多に存在し得ない霊体を操る輩(やから)が……」
魔界……?
呼び出す?
それって……それって……。
魔界っていうのは聞いたことがない。
だけど、紅さんの緊張感を帯びた声で、それがどれだけ恐ろしい存在なのかということだけは、わかる。
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