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「愛している」の、本当の意味。(5)

 僕には妖力が必要だから抱くんだって言ってくれればよかった。  あの、薔薇の匂いだって、本当は誰にでもわかるもので、僕は雨の匂いがするって紅さんは言ったけれど、それもきっと特別なものなんかじゃない。  だって、綺麗な紅さんを魅了することなんて、僕にはできないもん。  ――どこまでも優しい紅さん。  だけど……好きでもないのに、『愛してる』なんて、そんな言葉……言ってほしくはなかった。  でも、それもきっと、紅さんの優しさ。  残酷な、優しさだ……。 「……いよ」  あまりにも胸が苦しくって、痛くって、堪えられなくなった僕は、ベッドからムクリと身体を起こした。  少し先では、黒いソファーがあって、向かい合い、座っている紅さんと男の人ふたりがいる。  男の人ふたりはきっと、暁さんと朱さんに違いない。  3人の姿を見ることができなくて、僕の目線は、自分がいるベッドの切れ端を凝視する。 「比良、起きたん……」 「もういい!! 僕は、みんなにそこまでしてもらうような価値なんてない!!」  紅さんの言葉をさえぎり、それは鉄砲玉みたいに、勢いよく僕の口から飛び出ていく。  もう、どうでもいいや……。  僕は投げやりになって、ベッドの端から暁さんと朱さんへと視線を起こした。  ふたりとも、どうして僕がこんなに取り乱しているのかわからないっていう顔をしてる。  顔を見合わせて、困っている。  そうだよ。  僕はとても厄介な奴なんだ。  こうやって、みんなを困らせることしかできない、とても醜い存在なんだ。

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