195 / 253
「愛している」の、本当の意味。(4)
「構わないさ、どうせ花嫁探しをするのは昼間だ。それに、趣味でやっている株もパソコン片手でできるものだしな」
「俺の方も問題ねぇよ。生活するだけの金も、アルバイト代として、クレ兄が出してくれてるし……」
僕が知らないところで、こうやってたくさんの人が動いてくれている……。
紅さんも、僕をなんとか救おうとして命懸けで動いてくれている。
そっか、紅さんは僕を抱いて、力を与えてくれたんだ。
これ以上、霊体に悩まされないようにって……。
えっ?
ちょっと待って?
それって……。
ドクン。
僕の心臓が大きく震えた。
僕の中でさっき引っかかった、紅さんの言葉が――すんなりと入ってくる。
紅さんの言葉って言うのは、『妖力が僕に入った』っていうもの。
それが、僕の胸に、ストンと落ちてきた。
――ああ、そうか。
そうだったんだ。
紅さんが僕と身体を繋げたのはひとえに、僕を助けるための手段にすぎなかったんだ。
紅さんは、『僕を抱く』ことが目的なんじゃなくて、『僕に妖力を送る』ことが目的だったんだ……。
きっと、『愛してる』っていう言葉も、僕を助けるための――身体を繋げるために言ったものだったんだ。
……そっか、そうだよね。
こんな厄介な僕を、本当に好きになってくれるなんてこと、そんな都合がいいことなんてないよね。
だって素敵な紅さんには、こんな汚い僕よりも、もっとずっと素敵な人がお嫁さんになるハズだもん。
だったら、好きでもないのに、愛してるなんて言われたくなかった。
ともだちにシェアしよう!