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「愛している」の、本当の意味。(6)

「……もういいよ!! 嘘なんて言ってもらわなくてもいい……」  胸に溜まった悲しみが、喉まで押し上げてきた。  おかげで、僕の言葉は途切れてしまう。  途切れた言葉の代わりに出たのは、目から(あふ)れる涙だ。  おかげで、視界が滲んでいく……。  視界は歪みきっていて、3人の姿をちゃんと見ることができない。 「ひどい……ひどいよ……」  誰よりも、何よりも優しい紅さんが一番、残酷だ。  ……苦しい。  ……悲しい。 「比良?」  いつの間に僕の隣に来たんだろう。絶望に暮れる僕のすぐ隣から紅さんの声が聞こえた。  だけど、視界はやっぱり涙で何も見えない。  ポタリ、ポタリとシーツへと落ちる涙は、やがてシミになって、永遠に残るだろう。  僕の、悲しみに打ちひしがれたこの想いと同じように……。 「僕……ほんとに嬉しかったんだ……。紅さんと同じ気持ちなんだって……なのに……」  紅さんは違った。  僕なんかを愛していない。  僕は気味の悪い人間だ。  悪魔とか、そういうモノよりもずっとずっと気味の悪い、汚れた人間……。  なんて馬鹿なんだろう。  紅さんが心の底から僕を美しい存在だなんて思うはずがないのに、それを間に受けてしまったなんて……。  有頂天になって……。  僕は馬鹿だ……。 「比良? 君は何を言っているの?」  今さら(とぼ)けなくったっていい。  僕を助けるために身体を繋げたっていうことはもう、知っている。 「僕に力を与えるのが目的なら、『愛してる』なんてセリフ、言われたくはなかった!!」

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