198 / 253

「愛している」の、本当の意味。(7)

 僕を助けるためだったなら、そう言ってくれればよかった。  愛なんて……。 「愛なんて告げられたくなかったっ!!」 「比良!!」  グイッ。 「――っつ!!」  それは、僕が言い終えると同時だった。  突然、力強い腕の中に閉じ込められた。  トクントクンと、少し速い心臓の鼓動が耳に響く。 「比良。君は何か思い違いをしているね」  心音と一緒に、紅さんが話すたび、息を吸い込む音と、吐き出る息が伝わってくる。  紅さんに抱きしめられると、何も怖いものがないっていうくらい安心できる。  とてもあたたかくて、心地いい。  だけど……。  だけど今は……。  その優しい好意が、僕を苦しめる。  悲しませる。  思い違いなんてしていない。  紅さんが僕を抱いたのは、僕を助けるためだ。  それは、誰にも好かれない、この醜い存在を哀れだと思ったのかもしれない。  僕を助けるための、ただそれだけの偽善行為だったんだ……。  目の前にいる紅さんを睨(にら)もうとするけれど、目から溢れた涙のおかげで視界が揺らぐ。  それでも、涙を止めようと抵抗して、目尻を上げる。 「思い違いなんてしてなっ……んぅうっ!!」  僕の唇は紅さんの唇に塞がれ、言葉がさえぎられた。 「ん……んっ!!」  僕のことを想ってもいないのに、こうやって口づけする紅さんは酷い人だ。  なんとか抵抗しようと頭を後ろに反らせば、紅さんの大きな手によって後頭部を固定された。  おかげで口づけがいっそう深くなる。

ともだちにシェアしよう!