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「愛している」の、本当の意味。(10)

「わたしが今まで、君を傍においていた目的は何だと思う?」  紅さんは急に何を言い出すんだろう。  目的なんて、そんなの……もう決まっている。 「紅さんは優しくて面倒見がいいから、困っている人を放っておけなかったんでしょう?」  眠ることさえもできず、水も飲めなくなった身体。  その僕を――紅さんは面倒を見てくれた。  だけどそれは、同情からで……僕を好きだと言ったのは、本当は嘘だったんだ……。  あらためてその事実を噛みしめると、視界がぼやけた。  優しすぎる紅さんが恨めしい。  目は、涙で潤んでしまって効力はないかもしれない。  かまわず、僕は紅さんを睨んだ。  そうしたら、紅さんは口角を上げた。  紅さんはきっと、子供みたいな奴だって(あざけ)っているに違いない。  ……ズキズキ、ズキズキ。  痛む、僕の胸。  痛みを鎮めるために、力なく握った手を胸まで持ち上げた。 「へぇ、比良はそう思っているんだ」  それは、僕を馬鹿にするような口調じゃない。どちらかといえば自分を(さげす)むような、そんな感じ……。  強い刺激に耐えきれなくなった僕の頭は、ボーッとして、放心状態に陥っている。  紅さんのに身体を預けた。  いつもどこでも優しくて、綺麗な紅さんらしくないセリフだ。  紅さん?  睨むのをやめて、真正面から紅さんを見つめると、眉根に皺が寄っていた。 「それもそれで嬉しいけれど、わたしはそこまで美化された存在ではないよ」  ――違う。

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