213 / 253

力の使い方。(1)

比良(ひら)、準備はいい?」 「はい」  僕と(くれない)さんは今、紅さんの家から少し離れた山の中にいる。  紅さんに告白して、抱かれたのはもう3日前の出来事だ。  両想いになれた今は、紅さんに与えてもらった妖狐の力を扱う練習をしている。 「比良、目を閉じて、深呼吸をするんだよ」  コクン。  僕はひとつ頷いて、紅さんに言われたとおり、目を閉じる。  深く息を吸って、吐いて……吸って、吐いて……。  そうすると、昼間の太陽の光が僕を包んでいくのがわかった。  ……穏やかで、あたたかい。  力強い太陽。  まるで紅さんみたいだ。  そのまま、もう少し深い呼吸を続けていると、小鳥たちが僕に話しかけてくるように、可愛いさえずりが聞こえてきた。  (まぶた)の裏には、穏やかな陽の光が一身に降り注いでくる――。  気持ち良くて、うっとりしてしまう。  身体の芯がボーッとして、今僕が立っているのかも座っているのかもわからなくなった。  まるで、ふわふわと宙を舞っているような、そんな気持ちだ。  もしかしてこれが恍惚状態っていうのかな? 『まぁ、あの子新入りさんかしら?』 『新入りさんね』  ――えっ?  しばらくの間、うっとりとしていると、小鳥のさえずりが、人間の言葉に変化したんだ。  びっくりして目を開けると――。  ……グラッ。  僕の身体が不安定になった……。 「あわわわわっ!!」 「比良!!」  ドサッ!!  緑色の草の絨毯(じゅうたん)に倒れてしまった。

ともだちにシェアしよう!