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力の使い方。(2)
……痛みはない。
紅さんが、倒れる僕を支えてくれたんだ。
だってホラ、目の前には紅さんが着ている白いシャツが見えるもん。
あれ?
だけど、あれれ?
紅さんって、こんなに背が高かったっけ?
そう思ったのは、僕がおもいきり上を向かなければ、紅さんの顔を見ることができなかったからだ。
……えっと、うん。
たしかに紅さんは僕よりもずっと背が高い。
でもね、でも……これはあまりにも高いっていうか……。
高すぎる!!
「比良……。ああ、君はどんな姿をしても美しい」
――どんな姿も ?
その言葉に取っ掛かりを覚えたのは、僕の思い過ごしだろうか?
それとも……。
「可愛らしい……」
クスリと微笑まれ、僕の身体が宙を浮いた。
『へ? あわわっ』
あまりにも簡単に抱え上げられたから、僕はびっくりして紅さんの指にしがみ付いた。
えっ?
指?
今、僕は紅さんの指にしがみ付いているの?
腕じゃなくて?
あれれ?
頭が混乱していると、紅さんの柔らかい唇が僕の口に当たった。
その時、僕の頭についているふたつの何かがピクンと立ち上がる。
なんだか耳がこそばゆい。
それにお尻にある何か も反応した。
耳?
お尻?
えっ? えっ?
もう意味がわからない。
目がグルグルグル回る。
すると、さっきまで、可愛い声で鳴いていた綺麗な青緑色をした小鳥が、二羽。紅さんの膝に乗った。
『ちょっとちょっと、かわいいじゃない』
『かわいいわ、かわいいわ!!』
小鳥たちがオレンジ色のくちばしを動かすと聞こえてくる、人の言葉。
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