215 / 253

力の使い方。(3)

「そうでしょう? わたしの妻なんだ。これからよろしくね」  えっ?  ええっ?  鳥。  鳥がしゃべった?  しかもしかも、紅さん、普通に小鳥と会話してるっ!? 『お名前は?』 『お名前、お名前。教えて?』  小鳥に尋ねられ……。  回らない頭で返事をする僕。 『……えっと、僕。比良って言います』 『比良、いい名前ね、比良!!』  小鳥たちはそう言うと、真っ青な雲ひとつない空へと、飛んでいった。  え?  あれっ?  僕、今……あれ?  小鳥としゃべってた? 『紅さん、紅さん! 僕!』 「うん?」 『僕、小鳥さんとしゃべった!?』  僕が慌てふためいていると、紅さんは、僕を抱えたまま立ち上がった。 「比良、もう少し歩くと泉がある。そこで自分の姿を見てみるといい」  なんだろう?  紅さんの笑顔、いつもと同じだと思うのに、何かを隠してるみたいな意地悪な言い方だ。  紅さんが言った、『自分の姿』っていうのも意味がわからない。  だって、僕は僕だよ?  誰にもなることはできない。  意味がわからないまま、紅さんの腕にしがみ付いている手を見下ろせば……。  ふあっ!?  銀色の、ふさふさした毛があった。  しかも、手は人間のものじゃなくって、まるで、そう。  動物の……犬のような足。  犬……。  犬……。  紅さんは妖狐さんで……。  狐は犬の仲間だから……。  まさか!!  僕……今。狐になっているの?  しがみ付いていた紅さんの指から足を外して顔を触ってみると、出っ張った小さな鼻がちょこんと乗っている。

ともだちにシェアしよう!