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力の使い方。(3)
「そうでしょう? わたしの妻なんだ。これからよろしくね」
えっ?
ええっ?
鳥。
鳥がしゃべった?
しかもしかも、紅さん、普通に小鳥と会話してるっ!?
『お名前は?』
『お名前、お名前。教えて?』
小鳥に尋ねられ……。
回らない頭で返事をする僕。
『……えっと、僕。比良って言います』
『比良、いい名前ね、比良!!』
小鳥たちはそう言うと、真っ青な雲ひとつない空へと、飛んでいった。
え?
あれっ?
僕、今……あれ?
小鳥としゃべってた?
『紅さん、紅さん! 僕!』
「うん?」
『僕、小鳥さんとしゃべった!?』
僕が慌てふためいていると、紅さんは、僕を抱えたまま立ち上がった。
「比良、もう少し歩くと泉がある。そこで自分の姿を見てみるといい」
なんだろう?
紅さんの笑顔、いつもと同じだと思うのに、何かを隠してるみたいな意地悪な言い方だ。
紅さんが言った、『自分の姿』っていうのも意味がわからない。
だって、僕は僕だよ?
誰にもなることはできない。
意味がわからないまま、紅さんの腕にしがみ付いている手を見下ろせば……。
ふあっ!?
銀色の、ふさふさした毛があった。
しかも、手は人間のものじゃなくって、まるで、そう。
動物の……犬のような足。
犬……。
犬……。
紅さんは妖狐さんで……。
狐は犬の仲間だから……。
まさか!!
僕……今。狐になっているの?
しがみ付いていた紅さんの指から足を外して顔を触ってみると、出っ張った小さな鼻がちょこんと乗っている。
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