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魂のよりどころ。(2)
……綺麗。
この光を感じていると、なんだかとても、心が落ち着く。
「比良、そう。その気持ちを保つんだよ。どんな時でも、この気持ちを忘れないで。いいね」
この気持ちを……。
忘れないように……。
僕は紅さんの言葉を噛みしめ、ゆっくり頷 いた。
それは、紅さんに、荒れた心を鎮める方法を教えてもらってから、1週間が過ぎた。
僕は1日目のように妖狐の姿にならなくなった。
紅さんは、僕が妖力をコントロールできたと判断したみたい。
紅さんが思っていたよりもずっと、僕は力をコントロールするのが上手なんだって。
その言葉がいったい何を示すものなのかはわからないけれど、少しだけなら理解できた。
たぶん、僕の力を本格的に試すっていうことだ。
「比良、今からわたしが張った結界を消すよ。準備はいい? 君はとても力の扱いが上手だ。自分を信じて、力を使いなさい」
今までにない強い口調で紅さんは言った。
……結界が消える。
だから今日で力の使い方を教えてもらうのも最後なんだって思った。
「はい」
頷 いたものの、正直とても怖い。
結界が消えてまたあの霊体たちに襲われるのかと思うと、胃がキリキリ痛む。身体中を駆け巡っている血液が逆流しはじめるように、ドクドクと脈打っているのがわかる。
――また、食べ物や飲み物を口にすることも、眠ることさえできない前の姿に戻るんじゃないかと思えば、涙がこみ上げてくる。
だけど、今は前の僕じゃない。
紅さんに力を与えてもらったし、力の使い方も教えてもらった。
だから大丈夫。
今の僕ならできる。
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