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魂のよりどころ。(6)
身体も、心も……とても苦しい。
『お前さえ……お前さえいなければ、わたしは死ななかった!!』
――父さん。
ごめんなさい。
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。
首を絞められていて、声を出せない代わりに、心の中で謝り続ける。
大好きな父に首を絞められるという悲しい思いで意識が散漫になり、目が霞む。
視界は涙で、歪んでいく――。
『憎い、憎いよ……比良……』
ごめんなさい。
僕が……僕が生きていてごめんなさい。
目を閉じたまま、意識を飛ばそうとしたその時だった。僕の鼻腔から、薔薇の香りが漂ってきた。
紅さんだ……。
くれないさん……。
こんな人殺しの僕でも愛していると言ってくれた最愛の人。
もしかして父さんもそうだった?
生前、父さんはいつも僕を穏やかな目で見つめ、微笑んでくれていた。
そんな父さんが、僕は大好きだった。
だけど、今の父さんは……。
……ああ、そうか。
そうだね。
今の父さんが苦しいところにいるのなら、僕が父さんを助けなきゃ。
僕が死んでも、父さんは報われない。
それどころか、僕を殺してしまったら、父さんの御霊 はさらに堕ちてしまう。
そんなこと、させるわけにはいかない!!
僕は、だらりと横に垂らした両の手に力を入れて、拳をつくる。
大丈夫。
まだ身体は動く。
確認すると、目を開けて、父さんの骨ばった背中に、両手をまわした。
父さん……ぼく、とうさんのこと……大好きだよ。
たくさんの感謝と、大好きを想いを込める……。
『や、やめろ…………その手を……どけろ……』
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