227 / 253

魂のよりどころ。(7)

 父さんは怯えた様子でひとつ呻き、僕から飛び退く。  自由になった僕は立ち上がり、身体に巻きつけた妖力を広げた。  僕の妖力が空を舞い、その空間のすべてを覆う。  そして……。  ……ポツ。  ポツ。  僕の妖力が雫となって、闇の中へと落ちていく……。  ――僕は、自分の妖力を雨へと変化させ、降らせた。  やがて僕が創り出した雨は闇を溶かし、景色はまた深い緑に囲まれた山の中へと移り変わる。  僕の妖力である、降り注ぐ雨に当たった父さんは悲鳴を上げながら、消えていく……。 『や、や、だめ。きえちゃ、だめ……せっかくつくったのに……』  女の子は、悲鳴を上げて消えていく父さんにすがり付く。  せっかくつくったのに。  女の子の言葉から察すると、どうやらこの父さんは、僕が知っている、本当の父さんじゃなかったみたいだ。  ――父さんじゃないんだ。  よかった。  だって父さんはあんな闇の中じゃなくって、もっとあたたかい場所にいてほしいから……。 『だめだよ!! きえるの……だめぇぇぇぇえええええっ!!』  父さんが消えてしまうと、女の子は喉元を押さえて苦しそうに地面を転がり、足掻きはじめた。  瞬間、小さな身体がどこから生まれたのか漆黒の炎に包まれた。 「これ……なに?」  黒い炎なんて知らない。  僕じゃない。  僕はただ雨を生み出しただけだ。 「僕は何も……」 「彼女と契約した者の仕業か……」  気がつけば、紅さんは僕の隣に立っていた。

ともだちにシェアしよう!