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魂のよりどころ。(8)

「君の魂を奪うよう命じた者が彼女を不要のものだと判断したんだろう。葬り去るつもりらしい。……魂ごと――」  そんな……。 『パパ……ママ……いきたかっただけなのに……あたしも……そばにいきたかっただけなのにぃぃぃ!! うぇぇぇえええん、パパ、ママぁあああああ!!』  女の子の泣き叫ぶ悲しい声が、山の中に響く。  この子は……お父さんとお母さんがいる天国に()きたがってるの?  僕を殺すためじゃなく……。  本当は……ほんとうは……天界に逝きたかっただけ? 「なるほどね。比良の魂を欲している彼――もしくは彼女は、あの子に、『父親と母親がいる場所に逝かせてあげるから、代わりに比良の魂を奪え』と、そそのかしたんだろう。そしてあの子が比良の魂を奪うという目的に失敗したから、余計な情報をわたしたちに知られないために、葬るのか……。なんて、むごい」  そんな……。  あの女の子は、ただ単純にお父さんとお母さんのところに逝きたかっただけなのに……。  ひとりぼっちで苦しくて、悲しくて。  だから助けてほしかっただけなんだ。  ……父さんの傍に逝けない僕は、だけど、紅さんに出会うことができた。  今なら、僕はひとりじゃないっていうことがわかる。  だけど……あの女の子の魂は、この世にない。  誰も、あの子の傍に寄り添ってあげることができなくて……。  このままだと、お母さんやお父さんに会えないまま、滅んでしまう。  孤独のまま、転生することもできず、魂ごと消えてしまうの?  そんな……。

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