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魂のよりどころ。(9)
そんなの、ダメだ!!
「ダメだよっ!!」
僕は、漆黒の炎に包まれている女の子へと勢いよく走り込み、手を伸ばす。
「比良!!」
後ろの方では、僕を呼ぶ紅さんの声がする。
危険なのはわかる。
あの漆黒の炎は、魂さえも焼き尽くす、恐ろしいものだっていうことも――。
でも……だけど……。
僕は、あの子を放っておくことはできない。
僕だって同じなんだ。
ひとり取り残されて、紅さんがいなかったら、今もひとりぼっちで孤独で、ご飯も……お水さえも飲めなくて……苦しくて、悲しくて……。
生きるっていうことが辛くて、この世界がこんなに綺麗なものだったなんて、楽しいものなんだって気づけなかった。
父さんのところに逝けないって思った時の、あの苦しさは、この子と同じなんだ!!
だから……。
「大丈夫……だよ……」
僕は燃え盛る炎の中で、涙する女の子の身体を強く抱きしめた。
『っ、おにいちゃっ!!』
「大丈夫、お母さんとお父さんのところに逝こう。僕が、助けるよ……」
女の子の魂を燃やす漆黒の炎は、女の子を抱きしめた僕の手に引火する……。
この炎……とてもじゃないけれど、耐えることなんてできない。
ものすごく熱い。
熱いっていうどころじゃない。皮膚が痛い。
胸が……お腹が……まるで抉 られるみたいに、苦しい。
あまりの苦しさに、冷たい汗が、全身から吹き出していく。
何もかもを燃やしてしまう炎だ。
……苦しい。
雨よ……雨――。
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