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夢、現。(3)

 目を覚まさない?  僕、いったいどうしたんだっけ? 「あの……」  自分の身に何が起きていたのかわからず紅さんに尋ねてみると、整った眉尻を下げた。 「覚えていない? 君はとても無謀なことをしたんだよ」 「……むぼう?」  いまひとつ記憶が掴めない。  僕が首を傾げると、紅さんは苦笑いをして説明をはじめた。 「君は今日、妖力をコントロールするため、山の中へと出かけたんだよ。そこまでは覚えている?」  コクン。  僕が(うなず)くと、紅さんは続けた。 「わたしが結界を解いたことは?」 「……覚えています」  もう一度頷けば、紅さんは静かに首を振った。  ……なんだろう。  僕、紅さんに責められているような気がする……。  そう思ったのは、普段なら柔らかい笑顔を向けてくれる彼が、未だに眉根を寄せているからだ。 「わたしが結界を解いたことで、君は霊体と接触した。その後、パラレルワールドに連れて行かれたね」 「あ……」  そうだ。  思い出した。  僕が父さんだと思った霊体は、女の子が創った幻想で、囚われたんだ。  それを見破ったら、こっちの世界に戻って来ることができて、でも、今度は女の子が漆黒の炎に燃やされそうになって――。  あの子を助けたくて、炎の中に飛び込んだ。  ……ちょっと、まって? 僕は無事だった。ちゃんと生きている。  だったら、あの女の子は?   いったいどうなったんだろう?

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