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夢、現。(2)

「比良!!」  その声はとても苦しそうで、悲しいものだった。  苦しまないで……。  悲しまないで……。  お願いだから、僕のために、そんな感情を抱かないで……。  僕はね、貴方にはずっと微笑んでいてほしいんだ。  心安らかに、いつものようにとても柔らかな笑顔でいてほしいんだ。  だって……。  僕は……。  貴方の、優しくて、あたたかな心に惹かれたから……。 「比良!!」 「……くれない……さん……?」  僕の名前を呼ぶ声に反応して目を開ければ、そこには心配そうに眉根を寄せた(くれない)さんが、睫毛(まつげ)が触れるか触れないかの距離にいた。  ……え? あれ? 「僕……」  どうしたんだっけ……?  パチパチ瞬きすると、(あふ)れていた涙が一粒こぼれ落ちた。 「……比良、目が覚めたんだね、良かった」  ぎゅ。  紅さんが僕を抱きしめる。  あたたかな体温が、僕の身体へと伝わってくる。 「くれないさん……」  心地いい。  紅さんに抱きしめられると心まであたたかくなって、満たされた気持ちになる。  まるでお日様の下で日向ぼっこしているみたいな、そんな感じ……。  紅さんといると不思議なんだ。  怖いものなんてない。  恐れるものは何もないって思えるの。  僕のすべてを包み込んでくれる、僕が唯一安心できる場所……。  紅さんを想いながら瞬きすると、涙がまたひと粒こぼれた。  紅さんに抱きしめられているのが嬉しくって、僕も広い背中に手を伸ばす。 「比良……ああ、良かった。君が目を覚まさないから、とても心配したんだよ」

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