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夢、現。(6)

 僕だったら……。  とても悲しくて、苦しくて、死んでしまうかもしれない。  指を咥えて見つめることしかできない無力な自分を責め苛んで過ごしているに違いない。 「……ごめんなさい」  僕は、あの子を助け出すことしか考えていなかった。  僕の浅はかな考えが、紅さんを苦しめた。――悲しませたんだ。  ……ああ、どうしよう。  どうしたら許してくれるだろう。 「ごめんなさい」  紅さんを真っ直ぐ見ることができなくて、視線は揺るぎない炎を宿した真紅の目から、ベージュ色の天井へと移る。 「――許さない」  紅さんから怒りの言葉が、頭上から落ちてきた。 「――っつ!」  それはそうだろう。  だって、僕は自分のことだけしか考えていなかった。  しかも僕は自分の身体を気遣うことなく、命を投げ出した。  紅さんが……好きだと言ってくれた僕自身を、僕は見殺しにしようとしたんだ。  紅さんが怒るのもわかる。  僕が悪い。  自分を大切にしない奴なんて、嫌われて当然だ。  だけど……。  それでも、嫌わないでほしいと願ってしまう。  そんな自分は、とても勝手だ。  そう思うのに、口からは、身勝手な言葉が出そうになる。  僕はなんて、ワガママなんだろう。  僕の命は、今は僕だけのものじゃないのに……。 「ごめん……なさい……」  僕はもう謝るだけしかできない。  目から溢れた涙は、ポロポロと落ちていく――。 「罰として、今日は一日中、わたしに付き合ってもらおうかな」  自己嫌悪に陥っていると、紅さんは僕の耳元で息を吹きかけるように、甘い吐息でそう言った。

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