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夢、現。(7)

「もちろん、このベッドの上で……ね」  何を言われているのかわからない。  瞬きを数回繰り返せば、涙がポタポタと落ちていく。  だけど、嫌われたかもしれないという悲しい気持ちは、次第に消えていく……。  それは紅さんの熱っぽい声が原因だ。  耳孔(じこう)に送り込まれた優しい吐息が、僕のみぞおちを熱くする。  心は悲しみの色で染まっているのに、おかしな声が出てしまいそうになる。  僕は、一度は外した視線をまたゆっくり戻し、紅さんの表情を確認する。 「あの……」 「君に拒否権はないよ? わたしを困らせたんだ。それくらいの償いはしてもらわないと。比良、今夜は寝かせない」  紅さんは僕の問いかけを遮って、口を塞いできた。  するとすぐに、僕の口内へと熱い舌が入り込む。 「……ん、んぅ……」  忍び込んだ熱い舌は歯列をなぞり、口内を我が物顔で蹂躙していく……。 「っふ……」  恥ずかしい。  それなのに、大好きな紅さんから与えられる口づけを、拒絶することなんてできない。  後頭部を固定されると、よりいっそう唇の接合が深く重なる。  閉じることができなくなった僕の口からは、自分の唾液と紅さんの唾液が混ざり合い、顎を伝って流れていく……。  チュクチュクという、いやらしい水音が聴覚を惑わし、下腹部に熱をもたらす。  紅さん……。  紅さん……。  どうしよう僕も紅さんが欲しくなってくる。  紅さんを求め、広い背中へと回す。  骨張った長い指によって、僕が着ているシャツの前ボタンが、ひとつずつ外されていく……。  やがて僕の見窄(みずぼ)らしい身体がむき出しになると、紅さんの唇が僕の口を離れた。顎から首筋、鎖骨。そして胸へと滑り落ちていく。 「……あ」  胸に乗っているふたつの飾りを交互に吸われて声が漏れてしまう……。 「……っく、ん……」  身体中に落とされる口づけの度に、僕の腰が跳ねる。 「やあっ、も、許して……」  その日、紅さんが言ったとおり、僕は紅さんの下で眠ることなくベッドの上で喘ぎ続けた。

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