239 / 253
僕の知らない紅さん。(2)
朱さんは、湯のみを持っていない方の手で鼻下を擦ると、照れたように笑った。
……前に、ホテルで。
朱さんと暁さんに、会ったことがある?
「……あっ!!」
思い出した!!
紅さんが霊体と戦闘を終えた後、ホテルに来てくれたお兄さんと弟さんだ!
「あ、あの、僕!!」
……恥ずかしい。
あの時、僕はものすごく駄々をこねたんだよね。
泣きじゃくって、さんざん迷惑をかけたんだ。
「や、あの、えっとあの時は……」
――恥ずかしい。
紅さんの兄弟さんに、ヘンなところを見せちゃったんだ!!
穴があったら入りたい。
だけど、現実には隠れる場所なんてどこにもない。
気怠い身体にむち打って、ベッドから抜け出て朱さんと暁さんに謝ろうとした直後――。
「ちょっと待て! いい!! お前、そこから出るな!!」
むき出しになった僕の肩は、朱さんに取り押さえられた。
――えっ?
むき出し?
どういうこと?
不思議に思って、自分の身体を見下ろせば……。
「っふわああああっ!!」
僕は慌てて毛布を身体に巻きつけた。
なんで……。
なんでなんでなんでなんでなんでっ!!
なんで僕、裸?
視界がグルグル回りはじめる中で、考えていると、あるひとつの出来事が頭に過ぎった。
それは僕が紅さんの広い背中に腕を巻き付けている姿だった。
そういえば……僕、昨日は紅さんに寝かせてもらえなかったんだ。
いっぱいキスされて……。
「……っつ!!」
昨夜のことを思い出せば、身体がかあっと熱くなって心臓がバクバク煩くなった。
ともだちにシェアしよう!