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僕の知らない紅さん。(2)

 朱さんは、湯のみを持っていない方の手で鼻下を擦ると、照れたように笑った。  ……前に、ホテルで。  朱さんと暁さんに、会ったことがある? 「……あっ!!」  思い出した!!  紅さんが霊体と戦闘を終えた後、ホテルに来てくれたお兄さんと弟さんだ! 「あ、あの、僕!!」  ……恥ずかしい。  あの時、僕はものすごく駄々をこねたんだよね。  泣きじゃくって、さんざん迷惑をかけたんだ。 「や、あの、えっとあの時は……」  ――恥ずかしい。  紅さんの兄弟さんに、ヘンなところを見せちゃったんだ!!  穴があったら入りたい。  だけど、現実には隠れる場所なんてどこにもない。  気怠い身体にむち打って、ベッドから抜け出て朱さんと暁さんに謝ろうとした直後――。 「ちょっと待て! いい!! お前、そこから出るな!!」  むき出しになった僕の肩は、朱さんに取り押さえられた。  ――えっ?  むき出し?  どういうこと?  不思議に思って、自分の身体を見下ろせば……。 「っふわああああっ!!」  僕は慌てて毛布を身体に巻きつけた。  なんで……。  なんでなんでなんでなんでなんでっ!!  なんで僕、裸?  視界がグルグル回りはじめる中で、考えていると、あるひとつの出来事が頭に過ぎった。  それは僕が紅さんの広い背中に腕を巻き付けている姿だった。  そういえば……僕、昨日は紅さんに寝かせてもらえなかったんだ。  いっぱいキスされて……。 「……っつ!!」  昨夜のことを思い出せば、身体がかあっと熱くなって心臓がバクバク煩くなった。

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