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僕の知らない紅さん。(3)
身体に巻き付けた毛布をほんの少しだけ離して覗き込めば、真っ赤なキスマークが身体中のあらゆるところに付いていた。
……だからだ。身体がすごく怠いの……。
「紅は意外と情熱的なんだな……」
「だよなぁ、俺もびっくり。クレ兄はさ、俺と古都がワガママ言っても、いつも穏やかに笑って妥協してくれるだけだもんな。そう言えば俺、クレ兄が何かに執着するとこ今まで見たことなかったような気がする……」
顎に手を当てて、感心している暁さんに同意する朱さんは、コクコクと何度も頷いた。
……ううっ。
朱さんと暁さんの視線が痛い。
本当は僕が知らない紅さんのことをたくさん訊きたいのに、恥ずかしいっていう思いばっかりが頭の中をグルグル回っている。
気もそぞろになって、コソッと毛布を口のところまで引き上げた。
視線は……。
もう、どこに向ければいいのか、わからない。
ただただ朱さんと暁さんの刺すような、物珍しそうに見つめてくる視線がチクチク痛い。
居心地が悪くて僕の眼が空間をいったりきたりする。
「ふたりとも、あまりわたしの美しい比良を眺めないでくれるかな」
「――っふあっ!?」
突然ドアがある方向から紅さんの声が聞こえたと思って空間を漂わせていた視線を向けると、そこにはやっぱり白のシャツに身を包んだ紅さんの姿があった。
赤茶色の目が僕の姿を捉えると、真っ直ぐこっちへと向かってくる。
ここには朱さんや暁さんがいる。
それなのに紅さんはふたりとは目を合わそうとしない。
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