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僕の知らない紅さん。(7)

 紅さんの舌が口内を我が物顔で蹂躙する。  そうしたら、僕の意識はまた、定まらなくなる。 「わたしは今から兄さんと朱を連れて、仕事先の仕入れに行ってくるよ。ひとりになってしまうけれど、何かあれば強く念じなさい。すぐに駆けつけるからね。それから、お腹がすいたら朝食を冷蔵庫に入れておいたから温めて食べるといい。おやすみ、わたしの愛おしい比良」  紅さんは、視界がはっきりしなくなった僕の手から湯のみを外し、ベッドに寝かせると、僕の耳元で囁いた。  僕は何も言えないまま目を閉ざす。  すると両瞼に柔らかな唇の感触がした。  心地いい眠りに誘われ、また意識を手放す。  紅さんに求めて貰っている。  気にしてくれている。  それが嬉しくて口元が緩んでしまうんだ。

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