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妖狐の本質。(3)
でも、やっぱり世の中はそんなにうまくはいかない。
僕の霊媒体質が特化していた。
数少ない倉橋さんのような能力に長けた人でも僕の体質はどうにかできるものでもなかったんだ。
前の僕なら倉橋さんの霊力がどれくらいなのか、よく分かっていなかったけれど、今ならよく分かる。
だって、倉橋さんの周りに張り巡らされている霊力は隙がなくて、まるで無機質な空気がびっしり敷き詰まっているような感じがするもん。
倉橋さんはたぶん、僕が妖狐になったのを知って駆けつけてくれたんだろう。
彼くらいの力なら僕がわざわざ知らせなくても、きっと僕の居場所を簡単に突き止められるだろうから……。
僕は唾を飲み込むと、倉橋さんに自分の気持ちを伝えるため口をひらいた。
「はい、後悔はしていません。彼に出会って、僕は幸せの意味を知ることができました。今、とても幸せなんです……」
紅さんは気味悪がられていた僕を唯一愛してくれた人。
そして倉橋さんは霊媒体質の僕を支えてくれた人。
ふたりともすごく大切な存在で、『どちらか一方がいなくなったら』って思うだけで、とても悲しい。
……だから、紅さんを殺さないでほしい。
紅さんと戦わないでほしい。
倉橋さんがどう動くのか、一挙一動を見逃さないよう様子を窺う。
「大丈夫だよ、比良くんを助けたのに、戦う理由がない。そうか……君はそれでいいんだね」
倉橋さんはひとつ頷くと頭を撫でてくれた。
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