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妖狐の本質。(4)
……よかった。
倉橋さんは紅さんと戦いに来たわけじゃないんだ。
僕は詰めていた息を吐いた。
「あ、あの……中、入りませんか?」
「いや、やめておこう。いくら戦わないといっても、やはり彼とは敵対している者同士だからね」
「……はい」
「君を妖狐にした彼がどういう人物なのかは分からないが、一般的に言われている、『妖狐』というものは人間を騙すという行為を今まで幾度となく繰り返してきた。心配しすぎかもしれないが……」
「大丈夫です。紅さんはそんな人じゃないですから……」
「そうか、そうだね。君をここまで回復させてくれたんだ。だけど、何かあった時は連絡してきて。清人 さんが大切にしていた君は、私にとっても大切な人なんだからね」
倉橋さんは、懐に仕舞っていた一枚の名刺を取り出し、僕に手渡した。
去っていく倉橋さんの後ろ姿はやっぱり背筋が伸びていて、とても凛々しかった。
……ありがとうございます。
僕はそっとお礼を言うと、玄関のドアを閉めた。
1時間後、紅さんは、暁 さんと朱 さんと一緒に帰ってきた。
3人はやっぱりすごい。
留守の間、訪問した人物がいたことを知っていた。
訪問者のことを尋ねられ、僕は紅さんに出会う以前、お世話になっていた倉橋さんのことを話した。
そうしたら紅さんは、「上がってもらったら良かったのに」って言ってくれた。
どうやら紅さんにとって、倉橋さんは敵じゃないらしい。
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