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妖狐の本質。(6)

 とてもあたたかい。  だからこそ、ここに紅さんがいたらって、思ってしまう。  それはワガママだよね。 「比良、あのさ。無理して笑う必要はないからな?」 「えっ?」  それは、暁さんと朱さん。僕がお風呂に入った後のこと――。  3人一緒にリビングのソファーでくつろいでいた時だ。  朱さんは僕が入れたアイスティーに口をつけた後、そう言った。  グラスから溢れてしまいそうなくらいアイスティーを入れたのに、朱さんが手にしていたグラスをテーブルに置いた時には、もうすでにブロックアイスしか残っていなかった。  飲むの、すごく速いんだなあ……。  お風呂上がりだから、たくさん氷も入れたのに、頭、痛くならないんだ……。  ……って、そうじゃなかった。  グラスから視線を上げて朱さんを見ると、朱さんの表情もまた僕と同じように陰を帯びていた。  きっと、僕が元気ないから、朱さんにもこういう顔をさせてしまっているんだ。  罪悪感が過ぎる。  おかげで空気が陰湿になってしまった。  ……どうしよう。  気持ちの切り替え方もわからない僕は、ただただ朱さんの顔を見つめることしかできない。  紅さんの大切な家族さんなのに、こんな悲しい顔をさせちゃいけない。  なんとかこの場を明るくしなきゃ!!  そう思うのに、頭に過ぎるのはさっきと変わらず、立ち去り際に言われた倉橋さんの言葉ばかりだ。  そういう暗い自分がイヤになる。  紅さんはいったい、僕のどこを気に入ってくれたんだろう。

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