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妖狐の本質。(7)

『比良は感度がいいね』  抱かれた時、紅さんにそう言われたことがある。  もしかして、紅さんは僕の身体が気に入ってくれたのかな……。  そう……だよね。  根暗な僕にはそれしか取り柄なんてないよね。  ……ああ、だめだ。  気持ちはなんだか余計に暗い方向にいってる気がする……。  でも……でも……もし、もしも。  紅さんの前に素敵な人が現れたら……紅さんは僕よりも絶対その人を選ぶよね。  身体だけなんて、その場限りしかないんだから……。  だったら……お仕事先には僕よりも、もっとずっと綺麗な人たちが集まる。  こんなうすのろな僕じゃない、綺麗な人たちが――。  第一、僕は紅さんの薔薇の匂いが分かるっていうだけだ。  それだけで花嫁なんておかしい。  簡単に捨てられちゃうんじゃないかな……。  だって、僕が紅さんの魂の伴侶なんてどう考えてもおかしいもん。  きっとね、僕の他にも紅さんの匂いが分かる人なんてたくさんいるんじゃないかな。  ……苦しいな。  ほんの少しだけなのに、紅さんと離れると悲しくなる。  だって……。  だって僕、紅さんのこと何も知らないんだ。  お仕事している紅さんの姿も、暁さんや朱さん、それに古都(こと)くんといる時の紅さんの姿も、何も知らない。  ――ああ、そうだ。  僕は紅さんのことを何も知らない。  あまりにも悲しい気持ちが大きくなりすぎた僕の視線は朱さんから離れていつの間にか膝の上に置いている両拳にあった。

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