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第11話.入学式①
春らしい陽気で風も爽やかに吹いている。
そんな外の様子とはかけ離れた室内。
「なんで起こしてくれなかったの〜?」
真新しい制服を着て準備万端な静に誠が食ってかかる。
起こしても、起こしても、起きなかったことは棚の上だ。
「起こした………今…………」
静はいつも傍に持つようになった紙とペンを使ってサラサラと書いた。
『あと5分で準備しないと、初日から遅刻する。出来なかったら先に行くから』
洗面所の鏡とにらめっこをしている誠にその紙見せると、誠も急いで真新しい制服に袖を通す。
しかし、ネクタイの段階で手が止まってしまった。
「僕、ネクタイの付け方知らない!」
その言葉に静はため息をつくと、誠のネクタイを持って前に回り込んだ。
「じっと………して………」
慣れた手つきで静が誠のネクタイを締めると、2人は入学式が行われる講堂へと向かった。
「静、急がないと」
「大丈夫……急が…なくて」
静の言葉に、えっ? と誠が足を止める。
「…走れ……ないから……この…時間……」
寮の外にある時計を見てみれば、入学式開始の時間までまだ30分もあった。
ここから講堂まではゆっくり歩いても10分かからない。先日鈴成が10分前には必ず講堂に着いているように、と言っていたが、全く問題なかった。
2人が講堂に着いた時には、もうほとんどの新入生が集まって来ていた。
講堂の入り口で名前を言うと、そこでクラス表を渡された。
2人は同じA組で担任は鈴成だった。
事前に同じ寮は殆どの確率で同じクラスになり、寮の担当教諭がクラス担任になることは聞いていた。でも稀 に違うクラスになる事もあるとも聞いていたので、誠も静もお互いの名前があってホッとしていた。
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