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第12話.入学式②

講堂に入ると、寮で同室同士だったり同じ寮になった者同士でいくつかのグループが出来ていた。 「あ、誠、こっちこっち」 静は人付き合いが苦手なので、食事が終わった後の談話室に寄ることはなかったが、誠はそこでも友達をたくさん作っていた。 「行って……いい…」 静はその輪に入ろうとは思っていなかった。 でも、それを許す誠ではない。 「静も一緒に行くの」 最近では誠に触られても大丈夫になりつつあるが、急に腕を掴まれ、静は誠の手を払ってしまう。 「あ……ごめん………」 「いや、今のは僕が急に掴んだから。驚かせたよね」 誠も静にごめんと謝った。 と、そこによく食事の時に静の前に座る子がやってきた。 「本島くんだよね? いつも食事の時も話さないから、話をしてみたいって思ってたんだ。クラスも同じみたいだし、よろしくね」 「あ、(あつし)、静はね…え、ちょっと……まだ話してる最中だよー」 誠は他の面々に強制的に連れていかれ、そこには静と敦と呼ばれた少年だけが残った。 初めて話す人物に緊張し、言葉が出てこない静は、少し考えてから紙に書いた。 『事故が原因で声が上手く出ないから、これで話してもいい?』 紙に書かれた文字を読むと敦は少し驚いた顔をしてから、頷いた。 「そうだったんだ。あ、オレは佐々木敦( ささき あつし)。出身は誠と同じ中学なんだ。あいつとは腐れ縁って感じ。ここに受かったって聞いて驚いたよ。成績悪かったから」 そう言えば、誠自身もそんなことを言っていたなと静は思い出していた。 『僕は表情が変わらないから不気味だって言われてるだろ?』 『だから、誰も僕とは話したがらないと思ってた』 サラサラと書かれていく文字を追いながら読むと敦は首を横に振った。 「逆だよ。みんな本島くんのこと気にしてて誠に色々聞くんだけど、あいつ教えてくれなくてさ。知りたいなら自分で話せって言うのよ。だからオレが先陣を切った」 そんな風に自分のことを気にしてくれていたなんて、思っていなかった静は、自分も談話室に行けばよかったかな、なんて思っていた。 敦の肩越しに、壇上に先生や一部の生徒が上がって行くのが見えた静は、またサラサラと紙に書く。 『入学式始まりそう。また後で話してくれるかな?』 敦は嬉しそうに笑うともちろん、と言ってくれた。 静は敦が少し離れた所に行くと、緊張を解くようにひとつ息を吐いた。

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