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第13話.憧れの人①
壇上に上がる人達をなんとなく眺めていた静の横に誠が戻ってきた。
「敦と話せた?」
「ん……これで………」
静は頷くと紙とペンを誠に見せた。
「敦とは中学の時もずっと同じクラスで、席も隣だったんだ。成績は敦の方が何倍も良かったけどね」
それに静も返そうとペンを握るが、そこで『新入生はクラス毎に集まって下さい。ステージに向かって左側からA・B・C組と並んで下さい』と、マイクを通した声がしたので、それに従うことにした。
寮は第1〜4まであり、クラスはE組まであった。
進学校ではあったが、成績でクラス分けをすることは無かった。
ある程度の成績がなければ合格出来ないから、というのが理由らしい。
殆どマグレで合格してしまった誠を除けばなのだが、そのことが発覚するのはもう少し先のことである。
壇上には1年の担当教諭と新任の先生達、それに寮長達と生徒会の人達がいた。
生徒会に入るのは大変ではあるが、内申点が上がり指定校推薦をもらうには必須だとも言われていた。
ただ静の入試全科目満点合格、その後もずっと主席をキープすることが出来れば、もしかしたらそれ以上の内申点がもらえるかもしれなかった。
つまり、成績上位に入れそうも無ければ、生徒会に入るのが手っ取り早いということである。
もちろん選挙があるので、誰にでも入れる訳ではないが………。
そんな生徒会の面々の中に、誠は憧れの人を見つける。
あの人は、自分のことを覚えていてくれるだろうか? そんなことを思っていた。
今から半年以上前の残暑の厳しいある日の事。
誠は母親から頼まれた買い物をして、帰る途中だった。
荷物は重く、何度も何度も休みながら進んでいたので、つい愚痴が口から出てきてしまう。
『ったく、母さんが自分で行けばいいんだよ! 僕の背が伸びないのも週に3回はこんな重たいもの持って歩いてるからだっつーの』
そこに誠の母親がいたら
『それは遺伝ね。私もお父さんも背が低いから』
と、笑顔で言っていただろう。
『大変なら持とうか?』
救世主のような言葉にパッと顔を上げると、ニヤニヤと笑うどこかの制服を着た大柄な男が3人いた。
嫌な予感しかしないその3人に誠はフルフルと首を横に振った。
『すぐそこが家なので大丈夫です』
ありがとうござますと頭を下げるとニコッと笑った。
今まではどんな人でもそこで諦めてくれたのに、その人達は違かった。
『可愛いなぁ、お兄さん達と遊びに行かない? 何処にでも連れて行くよ』
買い物の帰りで荷物を持っていることは見えているはずなのに、それは無かったことになっているらしい。
『行きません』
誠はキッパリと断った。
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