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第21話.運命の相手?②

鈴成が静に触ると少し身じろぎはしたが、跳ね除けられる様なこともなく、スヤスヤと眠ったままだった。 触っていた鈴成にしか分からない程、ほんの少しだけその手を確認する様に静の手は動いていた。 さっき抱き上げた時といい、今といい、静の可愛い反応に鈴成はどうしたらいいのか分からなくなってしまう。 名残惜しい気持ちをしまい込んで、鈴成は静から手を離した。 ベッドから戻ってまた向かい合って座ると、拓海が溜め息混じりに呟く。 「目の当たりにすると嫉妬するなぁ。僕は勝手にもう静くんの家族になってるって思ってたけど自信が無くなるよ」 「バカなこと言うなよ。触れるか触れないかが問題じゃないだろ? 少なくとも俺には本島くんが兄貴を必要としてるって見えてた」 無条件に触れる、その事を羨ましく思ってしまった拓海だったが、鈴成に抱き上げられ、困惑した様子で自分の事を見ていた静のことを思い出した。 「鈴に諭されるとは思ってなかったな。お前も先生やってて成長してるんだな」 超えられない存在である拓海から褒められて、鈴成は照れて頭をカシカシとかいた。 「これで、鈴先生が静の運命の相手決定ってことなのかな?」 誠がポソッと言った言葉にその場にいた全員が鈴成を見た。 「いやいや、ちょっと待て」 鈴成は慌てるようにそう言うと、助けを求めるように拓海を見た。 「僕もそうなればいいと思うけど、こればっかりは当人同士の気持ちがどうなるかだからね。静くんのことだから、運命なんて信じないだろうし」 拓海はそう言うと寂しそうに静が寝ているベッドを見つめる。 拓海は静が起きたら2人だけで話したいと思った。 「そろそろ、みんな寮に戻った方がいい。静くんが起きたら僕が寮まで連れて行くから」 最後まで誠が残ると言ってきかなかったが、敦が拓海の真意を汲み取って、連れて帰ってくれた。 鈴成は少しだけ保健室に残った。 「鈴、急に変な事言ってごめん」 誠と敦がいなくなると拓海は鈴成に謝った。 「別に大丈夫。ただ、生徒をそういう目で見る事は出来ないな」 今度は鈴成が申し訳ないと拓海に謝る。 「それは分かってる。でも、もしも静くんが鈴の事……いや、もしもの話は止めよう。意味ないから」 「そうか? 本当に寮に戻っていいのか? 俺が運んでもいいけど」 鈴成は静が寝ているベッドの方を見る。 「大丈夫。運ぶのは僕でも出来るから。もう少し休ませたいし、鈴だって寮に戻らないと、そっちでの仕事もあるだろ?」 「じゃあ、本島くんの事は兄貴に任せるな」 鈴成が保健室から出て行くと拓海は1つ息を吐いた。 もしも静くんが鈴の事を好きになったら、卒業後でいいから真剣に考えて欲しい。

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